定期借家契約だと賃料が下がるって本当ですか?

最新更新日 2023年12月22日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

定期借家契約に興味を持たれた大家さんや、空室対策や賃貸管理について相談を受けた大家さんに定期借家契約を提案した際、よく出る質問がこちらです。

定期借家契約だと賃料が下がるって本当ですか?

実際にインターネットで定期借家契約について調べると、確かに賃料を減額しないと決まらない、賃料が相場より20%ほど下がるなど、賃料減額に関する記事が散見されます。

ちなみに、定期借家契約についてはこちらの記事で紹介しています。
賃貸トラブルの予防に必須な「定期借家契約」とは?

今回は定期借家契約を行う際の「賃料」について解説します。

【結論】ほとんどの場合で下げる必要はない!

【結論】ほとんどの場合で下げる必要はない!

まず、定期借家契約だからといって賃料を減額しなければいけないといった法的義務はありません
その反面、インターネットで調べると賃料を下げた方が良いといった記述は見られますが、その理由は「決まりにくいから」の一点です。

確かに、全く同じお部屋を募集すると仮定した場合、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2パターンで募集したら「普通借家」の方が圧倒的に選ばれて、あえて「定期借家契約」を選ぶ人はいないでしょう。

なぜなら、借りる側からすれば契約期間の満了までに退去しなければいけないリスクがあり、その心理的な抵抗から普通借家契約の方が安心して契約できます。
しかし、私が募集する際には原則として定期借家契約で募集し、かえって定期借家契約だからこそ安心して申込をするという方も多くいらっしゃいます。

その違いは何でしょうか?

大家さんが定期借家契約にしている理由を理解してもらう

大家さんが定期借家契約にしている理由を理解してもらう

大家さんが定期借家契約にしたい理由としては、主に「賃貸トラブルの防止」ではないでしょうか?

例えば、
・過度な家賃滞納をする借主がいる
・少しの物音で近隣にクレームを言いに行く入居者がいる
・いくら注意しても共用部分の私物を撤去してくれない

など、大家さんの頭を悩ませる借主・入居者がいても、普通借家契約では退去してもらうのは容易ではありません。

悪質な方が入居してしまっても合法的に対処できる、そもそも近隣に迷惑を掛けるような方が入居しないという状態を作るために、定期借家契約は大きな効果があります。
つまり、お部屋を探している人からすれば、「変な人が住んでいない可能性が高い」という大きな安心感が生まれ、定期借家契約はメリットに転嫁されます。

私が「定期借家契約だからこそ安心して申込をするという方も多くいらっしゃいます」と前記した際、「いやいや、そんな訳ないでしょ~」と思った方も、なんとなくご理解いただけたのではないでしょうか。

そのため、定期借家契約にしている理由を説明して理解してもらえれば良いだけなので、賃料は下げる必要はありません。

賃料を下げた方が良い例外

賃料を下げた方が良い例外

「例外」というよりは、定期借家契約の本来の使い方をする場合は、賃料を相場より下げた方が良いです。

それは、
・転勤中の3年間だけマイホームを賃貸したい
・3年後に建物の取り壊しを予定しているのでその間だけ賃貸したい

といった、「一定の契約期間だけ賃貸したい」という場合です。

国土交通省もそのような場合に定期借家契約を活用することを推奨したパンフレットを公表しています。
≪大家さんのための≫定期建物賃貸借契約

定期借家契約はそのような希望をより確実に実現するため、2000年に誕生しました。
それまでも似たような契約手法として「一時使用目的の建物賃貸借契約」というものがありましたが、色々と問題点もあり、賃貸トラブル防止を目的とした活用は出来ませんでした。

少し難しい文章ですが、一時使用目的の建物賃貸借契約の問題点については公益財団法人不動産流通推進センターで解説しているページがあります。
一時使用目的の建物賃貸借契約の問題点

定期借家契約にしている理由はどう説明すれば良い?

定期借家契約にしている理由はどのように説明すれば良い?

定期借家契約にしている理由を理解してもらえば、賃料を下げなくても問題なく決まるとお伝えしましたが、どのように説明すれば理解が得られるかが分かり辛いと思います。

私が普段説明している口頭の内容を紹介します。

説明の例文紹介

こちらの建物では、少し変わった契約方法を採用しています。
「定期借家契約」って聞いたことはありますか?

聞いたことがないという方がほとんどなのでご安心ください。
賃貸の契約をする際は、「普通借家契約」、いわゆる「普通」というものと、「定期借家契約」、いわゆる「定期」という、普通と定期の2種類があるんですね。

まず悪いお話しからすると、この「定期」というものは、例えば2年間という契約をすると、2年間で完全に契約が終了しますので、何もしなければ出て行かなければならなくなってしまうんですね。

ただ、大家さんとしては、「良い方に長く、気持ちよく住んでもらいたい」と考えているだけなので、基本的に問題がなければ、期間が終わる前に「更新」ではなく、「再契約」というものを結んで、数珠つなぎにしていくようなイメージになってるんです。

そうすることで、例えばいくら注意しても壁ドンを辞めないとか、直接「うるせぇ!」とクレームを言いに行くとか、ごみ屋敷みたいにして臭気をまき散らすとか、万が一近隣に迷惑を掛けるような方が入ってしまった場合でも、最悪2年間我慢すれば退去してもらえますし、定期借家にすることでそもそもそういった方が入らないので、安心してお住まいいただける対策として定期借家を採用しているんですね。

事例の紹介(実際に説明している例)

なので、定期借家を採用してからこの建物では大きなトラブルに発展したことはないですし、皆様良い方なので安心してお住まいいただけると思います。

この建物ではこれまでこちらからお断りしたケースはないのですが、私個人では過去に何百件も取引していますので、いくら注意しても壁ドンを辞めないとか、警察沙汰になってしまったとかで、お断りしたケースはあります。

多少のトラブルは集合住宅なので発生する可能性もありますが、その際も大きなトラブルにはならず解決できていますので、ご安心いただければと思います。

ただ、絶対に再契約できるという訳ではないので、その点だけはご了承いただければと思います。

定期借家契約の魅力を伝えて訴求力の向上を!

定期借家契約の魅力を伝えて訴求力の向上を!

今回紹介したように、定期借家契約の魅力を伝えることで、心理的なハードルが生まれて賃料を下げないと決まらない、ではなく、かえって魅力的に感じていただくことができれば、訴求力とともに成約率の向上が期待できます。

大家さんの安心できる賃貸経営を実現するために、ぜひ定期借家契約を活用しましょう。
ご愛読いただきありがとうございました。

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