賃貸管理で「内容証明」が必要なときは?

最新更新日 2023年12月24日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

 
賃貸管理を行なっていると様々なトラブルが発生しますが、トラブル対応の一つとして「内容証明を送る」というケースが稀にあります。

今回は「内容証明」について解説します。

内容証明とは?

郵便局(日本郵便株式会社)が行なっているサービスで、「いつ、誰から誰に対して、どのような内容の文書が差し出されたか」を郵便局が証明してくれるものです。

普通の郵便では、送った相手から「届いていない」と言われても送ったことの立証が難しいですし、レターパックでは届いたことは証明できても、どのような内容の文書を届けたのかまでは証明できません。

そこで、「内容証明」では文書の内容も郵便局で記録されるため、受け取った相手は「文書の内容を知らない、届いていない」という言い逃れができなくなります。

加えて、家主側の対応履歴としても残りますので、家賃滞納の場合などは家主の行動とそれでも借主が払わなかったという客観的な事実を残せます。

内容証明はどんなとき使うの?

基本的には揉めたとき、または揉めそうなときに使うものです。
賃貸管理における代表的な登場場面は以下となります。

①家賃滞納時の督促

数日遅れている場合は電話や口頭で督促すれば済むと思いますし、2週間くらいであれば手紙やメール、口頭などで揉めないように解決した方が得策です。
その場合でも、可能な限り「いつ、誰が、誰に対して、どのように督促したのか」を記録に残しておきましょう。

それでも払ってもらえない場合などは内容証明で督促を検討します。
まずは「いつまでに家賃を払ってください」と督促するだけの場合もありますが、内容証明を使用する場合は「いつまでに家賃を払ってくれないと契約解除しますよ」と強い内容にすることが多く、専門用語で「停止条件付解除通知」と呼びます。

②契約違反による賃貸借契約解除の予告・通知

借主が契約違反を犯した場合、家賃滞納と同じように揉めないように解決を図りますが、それでも契約違反を続ける場合には内容証明を検討します。

契約違反で内容証明を送るときは、契約違反をやめさせるというよりも、「いつまでに違反行為をやめないと契約を解除しますよ」と「停止条件付解除通知」を出して、契約を解除させる方向になることが多いです。
なぜなら、普通に注意してもやめないということは、借主は自分のやっていることは違反ではないと認識していることが多く、家主も「こんな人と契約は継続したくない」と関係性に傷が付いていることが多いからです。

また、この場合は紛争が生じる可能性が高いので、弁護士と相談しながら進めることを推奨します。
中には契約に違反していても契約解除が認められない場合もあります。

③定期借家契約の契約満了の事前通知

定期借家契約(定期建物賃貸借契約)では、契約期間満了日の半年前から1年前までに契約が終了することを借主に対して書面で通知しなければ、契約期間が満了した際に契約が終了したことを借主に対抗できなくなります。

建物の取り壊しなどで契約を終了させる場合は、何かしらの方法で書面を届けて、念のため電話や口頭でリマインドすれば問題になることはほとんどありません。

ただ、悪質な入居者だった場合に再契約せず契約を終了させる場合は、後から揉めないために内容証明で送った方が無難です。

内容証明の書き方とひな形

内容証明の文書にはいくつか要件がありますが、最大の注意点は書面1枚あたり「1行20字以内、26行以内」に収めなければいけません。(横書きは他に2パターンあります)
また、数字やアルファベットは半角ではなく全角で記入するのが一般的です。

参考までに家賃滞納の督促で使用する「催告書(停止条件付解除通知書)」と定期借家契約の「終了通知書」のひな形と記入例を紹介します。
家賃滞納催告書(ひな形・記入例)
定期建物賃貸借契約の終了通知書(ひな形・記入例)

内容証明の送付は賃貸管理会社に任せられないの?

上記のような内容証明の「送付」だけであれば賃貸管理会社が代理人として行うことができます。
そして、借主が自らの意思で滞納家賃を振り込む、契約違反をやめる、物件を明け渡してくれる場合は問題ありません。

ただし、内容証明で通知した内容に対して借主が反抗してきたときは、賃貸管理会社では法律上の限界があるため、弁護士など専門家と協力して解決していく必要があります。

最後に

内容証明は家主の主張を通知する方法の中で最も力強い方法となります。
軽微なトラブルで安易に送ると相手を怒らせたり、かえって弁護士を出させたりして大事になる可能性があるため、円満解決を望まない覚悟のある場合だけ使いましょう。

また、家賃滞納は家賃保証会社に加入してもらえばカバーできますし、契約違反の多くは不動産会社の内見時・申込時・契約時の怠慢が原因であることがほとんどです。
賃貸トラブルはなるべく未然防止に努めることを心がける必要があり、その一例をこちらで紹介しています。

ご愛読いただきありがとうございました。

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