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使用目的(約款解説)

最新更新日 2021年06月24日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

前回は「約款解説:契約期間と更新」ということで、国土交通省のホームページで掲載されている「賃貸住宅標準契約書」を例として、冒頭の第二条の解説を行いました。

不動産業者でも契約約款に記載されている一文がどのような意味で、そのような場面のトラブルを抑止するために記載され、どのような場面で用いられるのかを理解していないケースが非常に多いため、実務をイメージして第三条の解説を行います。

賃貸借契約書(国土交通省、保証業者型)

 


第3条(使用目的)

乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない。

 

建物を賃貸借する場合は、大きく分けると2種類に分類されます。

①居住用・・・住居(限定)として利用

②事業用・・・事務所や店舗、倉庫など

そして、賃貸借契約の名目も「居住用建物賃貸借契約」や「事業用建物賃貸借契約」と分かれます。

 

この第3条のように、「居住のみを目的」と記載されていないと、勝手に事務所や店舗として利用されてしまう可能性があります。では、住居以外の目的で利用されてしまった場合、貸主にとってどのようなリスクが伴うのでしょうか?

 

①不特定多数の出入り

店舗として利用されてしまった場合、当然お客様が様々来店されることになるため、知らない人が出入りすることになります。マンションなどで知らない人が出入りすることを嫌がる入居者がいたり、共用部分にごみを捨てたり、維持管理に弊害を及ぼす可能性があります。

 

②固定資産税等の上昇

家主が土地を所有している場合、土地に対して固定資産税・都市計画税が課されます。住宅用地は減税を受けられるため、税率が1/3~1/6に抑えられていますが、もし東京都主税局が事業用として使用していることを発見すると、減税が受けられなくなってしまいます。

 

③消費税の発生

基本的に、「賃料」は消費税の課税対象です。しかし、特例として「住居にかかる賃料」は非課税となっているため、賃貸マンションや賃貸アパートでは消費税が発生していません。

つまり、事務所や店舗として利用する場合は、賃料・管理費等に消費税を課税して支払ってもらう必要があります。

 

話は脱線しますが、賃貸経営を行う家主をはじめ、事業を行う人(事業者)には3つの種類が存在し、簡単に表現すると以下のようになります。

(1)免税業者

消費税を受け取ってもいいが、受け取った消費税を納税しなくても良い。

【例】消費税50万円受取、納税不要

 

 

(2)課税業者

消費税を受け取り、消費税を納税する。

その際、「受け取った消費税 - 支払った消費税 = 納税する消費税」となります。

【例】消費税50万円受取 - 消費税30万円支払 = 20万円納税

 

 

(3)簡易課税業者

消費税を受け取り、消費税を納税する。

「課税業者」と異なり、「受け取った消費税 - (受け取った消費税×40%)※ = 納税する消費税」となります。

※簡易課税業者の場合は、業種毎に定められたみなし仕入率で控除額が決まり、不動産業は40%となります。

【例】消費税50万円受取 - 20万円(50万円×40%) = 30万円納税

 

 

鋭い方は「免税業者なら、消費税50万円は自分のものになるんじゃないの?」と考えたと思いますが、その通りです。

その場合、自分のものになった50万円のことを「益税」と呼びます。免税業者になるには年間の課税売上が1,000万円までの事業者が選択できますので、あえて高い賃料を狙うのではなく、年間の課税売上1,000万円以内になるよう賃料をコントロールしている家主様もいます。

しかし、近年の流れとして、益税を実質的に排除しようとする動きがあり、それを2023年10月が施行予定の「インボイス制度」といいます。先ほどの「課税業者」では、支払った消費税を控除することができると書きましたが、簡単にお伝えすると、免税業者に支払った消費税を控除できなくなります。

【例】消費税50万円受取 - 免税業者に消費税30万円支払 = 50万円納税

テナントが家主に対して支払った家賃の消費税が控除できなくなるため、免税業者のテナントビルは避けられる傾向になると思います。

 

 

また、消費税還付スキームというものも流行った頃があります。先ほどの課税業者の例でお伝えすると、

【例】消費税50万円受取 -消費税80万円支払 = 30万円還付

となります。法人を設立して課税業者になり、微量の消費税を受領し、建物(主にテナントビル)を購入すると、

【例:建物価格5,500万円と想定】消費税10万円受取 -消費税500万円支払 = 490万円還付

となります。しかし、こちらも近年の法改正で規制がかかり、消費税還付スキームは困難になりましたが、長年課税業者として運用していた資産管理会社に不動産を移転させる場合などは還付を受けられる可能性があります。(簡易課税業者の方が得なケースも多々ありますので、資産税に詳しい税理士へ相談しましょう。)

 

 

話を戻しますが、住居のみだった賃貸マンションに、もし無断で事務所利用している方がいると発覚した場合、様々なリスクが発生します。それを避けるための契約条文が、この第3条なのです。

ご愛読いただきありがとうございました。

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