フルリフォームは給水管も

最新更新日 2023年12月28日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

築30年を超えてくるとフルリフォームやフルリノベーションを行うケースが増えていきます。キッチンやユニットバス、洗面台、トイレ、壁、床などが一新されて新築のような状態になっていれば、賃貸募集時に賃料の増額も期待でき、設備トラブルのリスクも減るため、私も実施を推奨しています。

その際、よく工事項目が見送られてしまい、築35年~築40年頃になって発生しやすいトラブルが「漏水」です。その理由となるのは、給水管の交換工事(または新設工事)を行っていないことです。

 

現在からおよそ20~30年以上前に普及していた給水管には、鉄管や銅管、塩ビ管(ポリ塩化ビニル管)、塩ビライニング鋼管、ステンレス管など様々な種類があります。しかし、新築工事から30年ほど経過すると配管同士の継ぎ手部分から漏水が発生しやすくなり、もし入居中に漏水が発生すると入居者や下階の入居者に対して大きなストレスを与えることになります。

また、給水管を後から工事しようとする場合、キッチンやユニットバス等を再設置しようとしても上手く接続できない場合があり、せっかく交換したキッチン等を再度交換しなければいけない可能性もあります。新規交換や床の解体を避ける場合は、給水管を露出させなければいけないことも多く、室内の景観が悪くなってしまいます。

 

築30年以上のマンション・アパートは維持管理を考えると、年間のリフォーム予算を想定し、退去した部屋から一部屋ずつ給水管の交換工事を含めたリフォームを行っていくことが理想です。しかし、キッチンやユニットバス等と違い、給水管は目に見えない部分のものなので、交換したからといって賃料を増額させることは困難です。給水管の交換工事を提案しても嫌がる家主様も多いため、耳障りの悪いことを言いたくない不動産業者は提案をしないケースが非常に多く、漏水事故が発生してから後悔された家主様も見てきました。

漏水事故が発生した場合、給水管の補修工事を除いて内装の復旧費用や漏水によって損害を負った家財は火災保険で賄えるケースが多く、金銭面での負担が過分に生じることは多くありませんが、漏水事故には以下のようなリスクが伴うことを理解しておく必要があります。

①入居者から工事期間の仮住まい費用や工事立会のために会社を休んだ分の日当を請求される

②漏水によって修繕完了まで使えなくなった部分に応じた賃料減額請求

③根太や下地の腐食開始

④修繕後、修繕箇所以外の給水管(継ぎ手)から再度漏水

⑤申請額によっては鑑定人立会となり、申請額の全額を認定が受けられず一部を自己負担

⑥火災保険の累積の認定額によっては保険会社からの更新拒否

 

上記①~⑥は必ずしも記載の通りになったり、応じなければいけなかったりする訳ではありませんが、発生すると非常に面倒なことになるのは間違いありません。給水管の工事を行うには床の開口、または解体して新たに床を作り直す必要がありますが、床自体も築30年~40年で老朽化し、床鳴りが激しくなったり、床がデコボコになったりしてきてしまうため、いずれにしても築30年頃に給水管と一緒にやってしまう方が得策です。

緊急時に考え始めるのではなく、前もって収支改善や修繕計画を練っておくことで、充分対応することは可能です。家主様によってそれぞれ事情がある中で、その状況に応じた物件の維持管理に努めることを最大限サポートすることが、賃貸管理会社の使命だと日頃から実感しています。

ご愛読いただきありがとうございました。

 

 

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