家主が知っておくべき「間違った空室対策」

最新更新日 2023年12月28日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

現在は開発や築古物件の建て替え、相続税対策などの流れで賃貸マンション・賃貸アパートが増え続け、賃貸住宅の供給は増加の一途を辿っています。
その反面で、2007年をピークに日本の人口は減少の一途を辿っているため、需要は減っています。東京都内の人口は微増、または現状維持という地域も多く存在しますが、需要と供給のバランスは崩れてきているため、空室率は今後も増加の傾向にあります。

その中で、家主としては「なんとか空室を減らさなければ」と頭を悩ませながら様々な空室対策に取り組んでいる姿を目にしますが、残念ながらせっかく実施した空室対策が失敗に終わり、空室が決まり辛い、早期に退去されてしまうなど、成果に恵まれない家主も存在します。

以前、不動産オーナー向けの月刊業界誌「家主と地主」で「やってはいけない空室対策」という特集があり、インタビューを受けた中で2つの事例を掲載していただきました。

今回は代表的な「間違った空室対策」についてお伝えします。

インパクトが強すぎるアクセントクロス

従来はクロス(壁紙)を白一色で統一するのが主流でしたが、4つの壁面のうち1面だけ違う色のクロスを貼る、梁の部分だけレンガ調のクロスを貼るなど、白をベースに一部違う柄のクロスを貼ることでアクセントを加え、オシャレに内装を仕上げる空室対策です。

最近の新築分譲マンションやリノベーション物件でも多く採用されていますが、良かれと思って家主が選別したアクセントクロスがかえって物件の印象を悪くしてしまい、成約に逆効果となっているケースもあります。
その一つの事例が「家主と地主」で掲載された「ゼブラ柄(シマウマ模様)のアクセントクロス」でした。

当初、家主が自身で選んだゼブラ柄のクロスが貼られていて、半年間空室の末にようやく成約したお部屋だったようですが、入居後2~3年で退去となりました。
室内の状況はこれといって破損・汚損はなく、ルームクリーニングの実施のみで募集できる状態でしたが、私は早期成約を目指すためにゼブラ柄部分を他のクロスへ貼り替えることを提案し、施工完了後に募集開始したところ、賃料等は従前と同じ条件でしたが1週間で成約に至りました。

私の経験上では、アクセントクロスに動物の柄や幾何学的な模様などを採用すると失敗するケースが多いです。また、単色の場合も色味が強すぎるとかえってマイナスの印象を与える可能性が高いです。

単色であれば薄めな色味にした方が好印象を与えやすく、柄物も木目やレンガ調などの馴染みある柄の方が成功しやすいです。

実用性を下げてしまうリノベーション工事

空室がなかなか決まらず、建物もそれなりに築年数が経過していた場合、「何とかしなければ・・・」と雑誌やインターネットで調べた結果、リノベーションに行きつくというケースは多く見られます。

しかし、
・なぜかリノベーションを実施したのに決まらない
・当初はすぐに成約したが、一度退去があり再募集したらなかなか決まらない
・リノベーションの工事費が多額で本当に効率的な投資だったのか分からない

という声も多いのが実情です。

これはリノベーションだけでなく、新築マンションでもよくあることなのですが、デザイン性ばかりに注力して、住み心地は度外視しているケースが非常に多いです。
リフォームやリノベーションに重要なことは、市場や現場のニーズを把握し、あくまで「人が生活を営む場所として快適かどうか」を考えることです。

このリノベーション問題についてはこちらの記事で注意点を説明していますので、ぜひご一読ください。
管理会社が空室対策で提案する「リノベーション」の問題点は?

条件をリスクヘッジ無しで緩和させる

例えば、決まらないから「ペット可」にする、単身物件でも二人入居OKにする、問題のありそうな入居者でも契約するなど様々です。

確かに空室は死活問題なので、何とかしたい一心でそのような決断をする気持ちも理解できますし、そのような判断も選択肢の一つであると思います。
ただ、それらは相応のリスクへの対策を行って初めて有効なものとなりますので、ただ条件を緩和させるだけでは、後から大きな後悔へと繋がることは珍しくありません。

例えば、これまでペット不可で他の世帯を契約していた場合、家主は「建物の保存義務(ペットを不可にすることで建物の保存に努めている)」や「特約遵守義務(ペット不可と特約を定めたことを家主自身が守っていく)」が発生します。
つまり、決まらないからとペット可にしてしまうのは、保存義務や特約遵守義務に違反していることになってしまいます。

本来であれば、他の全世帯から同意を取った上でペット可に変更するのが正しい対応で、契約時にも敷金積み増しやペット対応の様々な特約、頭数や種類の制限など、リスクヘッジを行って初めて有効な空室対策となります。

では、空室対策は何から始めればいいの?

私が多くの空室問題に携わる中で最も多かったのは、「そもそもちゃんと募集されているのか?」です。

試しに、インターネットで「SUUMO」と検索してみてください。
次に、ご自身の物件が出てきそうな条件を入力して、出てくるかチェックしてください。

もし出てこなければ、正しい情報を入力していないからヒットしない、あるいはそもそも募集されていない可能性があります。
また、ご自身の物件が見つかったらページを閲覧してみましょう。

綺麗な写真が多く掲載されていますか?
詳細情報はしっかりと入力されていますか?
入力されている情報は誤っていませんか?

もし、綺麗な写真がどんなものか、詳細情報はどのくらい入力されているのが適切なのか分からない場合は、キーワード検索で「東京レント」と検索してみてください。
スマートフォンの場合は、一番下にスクロールすると「PC版表示」とあります。

PC版に切り替えてから一番下にスクロールすると「キーワード検索」の検索欄があります。

ソリューション事業部で管理している物件はホームステージングを実施して撮影しております。他の事業部で募集している物件もSUUMO掲載は私が行っていますが、ホームステージングをしないまでも最大限のクオリティは求めています。

見比べていただければ、改善点も多く見つかるかもしれません。

最後に

インターネットで「空室対策」と検索すれば、多くの対策方法が紹介されていますが、その多くは「お金が掛かること」です。
なぜなら、リフォームやリノベーション、無料インターネットなどは「空室対策」を切り口に自社の商品を売ろうとしている業者が多いからです。

それらは商売でもありますし、時には有効なものもありますが、空室対策はお金を掛けることが全てではなく、お金を掛けなくてもできることは数多く存在します。
その一部やお金を掛けるケースの多い「築古物件」の空室対策について、以下の記事で紹介しています。
築古物件の空室対策に必要なことは?

適切な空室対策で効果的に満室経営を実現できることを祈っていますし、ご相談いただければ最大限サポートさせていただきます。
ご愛読いただきありがとうございました。

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