定期借家で契約するにはどうしたら良いの?

最新更新日 2023年12月22日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸トラブルの抑止や対策として注目を浴びている「定期借家契約(定期建物賃貸借契約)」ですが、実際に活用しているケースは賃貸業界の全体から見ればかなり少数です。
大家さんがせっかく興味を持っても、不動産業者が法的要件や業務量の増加によって、やりたがらないというケースも非常に多いのが最たる理由です。

そして、定期借家契約を活用している不動産業者を探した末にご連絡をいただき、
「定期借家で契約するにはどうしたら良いのですか?」と質問を受けることが多々あります。

今回は定期借家契約の方法について解説します。

定期借家契約に必要なのは”たった2つ!”

定期借家契約に必要なのはたった2つ!

定期借家契約は色々と法律要件があり難しそうに感じますが、実は必要な要件は以下のたった2つなのです。

①専用の賃貸借契約書
②賃貸借契約書とは別紙で説明

つまり、専用の契約書を用意して、定期借家契約であることを別紙で説明すれば、それだけで定期借家契約は締結することができますので、非常に簡単なのです。

専用の賃貸借契約書とは?

専用の賃貸借契約書とは?

国土交通省からも契約書の雛形が公開されています。
定期賃貸住宅標準契約書:国土交通省

実務上で使用されるのは、不動産会社が加盟している協会の雛形や、賃貸管理ソフトの雛形、各社が個別でカスタマイズした雛形となっているため、国交省が公開している契約書よりも条文が多くなっているケースが多いです。

主に一般的な賃貸借契約(普通借家契約)と異なるのは、
・更新がないことが明記されている
・契約の終了を主張するための通知期間が記載されている
・再契約に関する事項が記載されている

といった部分です。

普通借家契約では「更新」がありますが、定期借家契約ではそもそも「更新」という概念がありません
それに伴って、契約期間が終了した後も入居者が住み続けるには「更新」ではなく、「再契約」が必要となります。

また、定期借家契約で期間満了により契約を終了させて、退去を請求する場合は期間満了の1年前から6か月前までの間に、「終了通知」を出す必要があります。

賃貸借契約書とは別紙で説明?

賃貸借契約書とは別紙で説明とは?

例えば、定期借家契約が契約書だけで成立するとしたら、大家さんが「終了通知」を出した際に以下のようなやり取りが予想されます。

借主:「いや、定期借家になっているなんて聞いてないよ!」

大家さん:「いやいや、契約書に書いてあるでしょ?」

借主:「こんなにいっぱい文字が書いてあるんだから、そんなの分からないよ・・・」

大家さん:「でも契約書に書いてあるんだから、ちゃんと退去してもらいます」

借主:「第一、そんなに大事なことをちゃんと説明しないのは納得いかない!それを知っていたら契約もしなかった!」

と、紛争になる可能性があります。
それを防ぐために法律で定められているのが、定期借家契約であることを賃貸借契約書とは別紙で説明することです。

この雛形も国交省が公開しています。
■「定期賃貸住宅標準契約書」関係様式のダウンロード
定期賃貸住宅契約についての説明

実務上では、不動産業者が重要事項説明書や賃貸借契約書を説明する際、一緒に説明することがほとんどなので、雛形にも「代理人」という項目があり、不動産業者が大家さんの代理人となって説明するのが一般的です。

大家さんにはあまり関係のない余談ですが、この別紙での説明は一定の要件を満たせば重要事項説明書で兼ねることができ、わざわざ別紙を作成しなくても良いとされていますので、私は重要事項説明書で兼ねる書式にカスタマイズしています。

元々法律的には禁止されていた訳ではなかったのですが、対面だけではなくテレビ電話での重要事項説明が可能となった法改正があった際、国交省から通達された書面によって可能であることが明確になりました。
定期建物賃貸借に係る事前説明におけるITの活用等について

定期借家契約は意外と簡単にできる!

定期借家契約は意外と簡単にできる!

定期借家契約は「難しそう」「面倒くさそう」「大変そう」とイメージばかりが先行してしまっているのですが、慣れてしまえば普通借家契約とほとんど同じように契約できます。

契約した後に発生する大きな違いとしては、契約期間が満了した後も住み続けてもらうためには、更新ではなく再契約が必要となります。
便宜上は再契約と呼んでいますが、法律的には再契約はあくまで新規での契約と一緒なので、改めて重要事項説明や別紙での説明等が必要となります。

その手間だけで多くのメリットを享受できるため、ぜひ定期借家契約を活用することをオススメします。
ご愛読いただきありがとうございました。

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