全ての交渉と対応で”結果”を左右する重要なテクニックとは?

最新更新日 2023年12月22日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸経営を行っていると、様々な賃貸トラブル対応や交渉が発生してきますが、上手く結果が出ている人と揉めてばかりいて結果が出ない人がいます
その要因は様々ですが、大きな要素が2つあります。

今回は全ての交渉と対応で”結果”を左右する2つの重要なテクニックを紹介します。

揉める人の共通点

揉める人の共通点

交渉が上手くいかない人、揉めてしまうことが多い人、賃貸トラブルを炎上させてしまう人には共通点があります。
それは、「自分の考えが正しいと主張し、相手に自分の考えを強要すること」です。

例えば、家賃滞納が発生したとします。
滞納している人に対して、「家賃ぐらい約束なんだからちゃんと払ってください!」と督促した場合、言っていることは正論です。
しかし、揉める可能性が高く、その後の人間関係には大きく亀裂が入り、些細なことも大きなトラブルになっていく可能性が飛躍的に高まっていきます。

言い方は別として、なぜ正論を言っているのに揉めてしまうのでしょうか?
それは、誰しも「自分は正しい。自分は悪くない。」と考えているからです。

皆が「自分は正しい」と考えている

どんな凶悪犯も「悪いことをしている」といった自覚はなく、あくまで自分は正しい、自分はやむを得ずそうした、などと考えています。

例えば「アル・カポネ」というアメリカの有名なギャングは、「俺は働き盛りの大半を、世のため人のために尽くしてきた。」と語っています。
暗黒街の顔役と呼ばれたアル・カポネでさえ自分のことをそのように考えていたということは、家賃滞納や騒音トラブルなどの当事者はどのように自身のことを考えているのでしょうか?

ましては、漏水や設備故障などで入居者に迷惑を掛けているにも関わらず、その入居者が怒ったからといって逆切れする賃貸管理会社の担当者もいて、それによって炎上してしまうというのは論外です。

つまり、滞納している人にはその人なりの正義があり、その人なりの事情があります
それを「間違っている!」と否定することは、相手の正義を否定することになり、論理的にはどうあれ、感情的には良くない方向にしか進みません。

交渉を成功させる2つの要素

交渉を成功させる2つの要素

では、交渉や対応を行う際、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?

それは、「相手方の正義を守ること」「選択肢・代替案を提示すること」です。
この2つをしっかり実践するだけで、結果は良い方向に大きく変わります。

私は原状回復費用で数十万円を請求しても、最終的には「ありがとう」と言われてお支払いいただいたことが何度もあります。
3年間の間、ほぼ毎月家賃滞納が発生して保証会社の代位弁済(立替払い)が行われていた入居者さんも、私が新規で管理委託を受託してから一通の手紙と少しのやり取りで、家賃滞納がピタッと無くなりました。

それらの秘訣について一つずつ見ていきましょう。

相手方の正義を守る

相手方の正義を守る

まずは基本として、相手方の正義を否定するような言動は避けましょう
加えて、
「もしかしたら自分が間違っているかもしれない。」
「もし自分があなただったら、自分もそう感じていたと思う。」

ということを伝えるようにしましょう。

例えば、家賃滞納が発生した際、「月末までに入金されていなかったので払ってください。」というのは、「あなたは約束を守れていない。約束を守ってください。」と言っているに等しいです。

そこで、以下のように伝えれば不快な想いをさせずに督促できます。

もし行き違いや自分の手違いであれば大変申し訳ないのですが、月末までにご入金いただく家賃が確認できておらず、月の変わり目でお忙しくされていると思うのですが、一度ご確認をお願いできませんか?」

私の経験上では、以上のような督促で全件家賃を回収できています。
また、退去後に敷金を超える原状回復費用を請求する際、「あなたがこれだけ傷をつけたり汚したりしたんだから、しっかり払ってください!」と伝えても、揉めた挙句に費用も回収できないという結果になるでしょう。

以下のような伝え方をすれば、結果は大きく変わります。

「大変言い辛いことですし、Aさんにとっても気分の良くないお話だと思いますが、まずは内容をお伝えします。
(具体的な施工方法や検討した内容、金額などを伝えて)僕が不動産業界ではなく、たぶんAさんの立場でこの金額を見たら、すごく高いと感じていたと思います
何とか金額を減らそうと色々調整したのですが、これが一番ご負担を減らした内容になりますので、Aさんとしてはいかがでしょうか?」

このように、「あなたは悪くない。何かの行き違いがあったのかもしれない。自分も逆の立場なら嫌な気持ちになっていたと思う。」ということを伝えることで、こちらの要望を理解してもらいやすくなります。

選択肢・代替案を提示する

選択肢・代替案を提示する

人は「やるか・やらないか」「YESかNOか」と聞かれると、単純計算だと50%ずつの確率でどちらかを選びます。
しかし、「現状維持バイアス(変化や未知なものを避けて、現状を守ろうとする傾向)」が働き、実際には「やらない」「NO」という回答の方が多くなる場合もあります。

そこで、「A・B・C、どれが良いですか?」と聞かれると、「やる」「YES」が前提となってどれかを選択するケースが飛躍的に高まります。

また、一つの事柄だけを提示すると「もっと他に方法があるのではないか?」と不安や不満を抱く人が多いです。
しかし、「A・B・Cの案がありますが、(それぞれのメリット・デメリットを説明し)、総合的に考えるとBが良いと思いますがいかがですか?」と聞かれると、「じゃあ、Bで」となりやすくなります。

例えば、原状回復費用の例で考えてみましょう。

実例:建具に大きな傷が付いていた

いきなり、「補修で3万円掛かります」と伝えれば、「高いだろ!もっと他に方法があったはずだろ!」と揉める可能性があります。

そこで、以下のような説明をすれば、飛躍的に承諾が得られやすくなります。

「この建具を直すためには、建具ごと交換するか、表面を張り替えるか、補修屋さんに似たような木目の塗装をしてもらって補修するか、主に3つの方法があります。
ただ、本体交換だとかなりの金額がしますし、表面はダイノックシートという特殊なシートなので意外と金額が高くなってしまいます。
今回は補修屋さんに、削れた部分はパテで埋めて、表面は塗装で木目を書いてもらうのが一番安く済みますので、費用は3万円なのですがいかがでしょうか?」

実際にこのような説明を行うことで、スムーズに原状回復費用をご負担いただけるケースが多いです。

まとめ

今までこのような方法を行ってこなかった方にとっては、「本当か?そんなに上手くいくはずがない」と否定的な気持ちになると思います。
私もそれらの方法を知って実践するまでは、同じように思っていました。

まずは「相手方の正義を守る」だけでも実践してみてください
私はデール・カーネギーの「人を動かす」でその考え方を知り、何度も読み返して実践しました。
ここには家賃滞納や原状回復費用の請求、その他様々な賃貸トラブルを対応する上で、活用できる非常に重要な考え方・テクニックが満載です。

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文庫本だと文章量も多く読書があまり得意でない方は嫌になってしまうかもしれません。
その場合はマンガ版でも良いと思いますし、オリエンタルラジオの中田敦彦さんがYOUTUBEで解説している動画も要点がまとめられていて、話も面白く、楽しく学べるのでオススメです。

ぜひ今回お伝えしたことを活かしてストレスのない賃貸経営の一助になれば幸いです。
ご愛読いただきありがとうございました。

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