新築アパート・新築マンションに空室対策は必要なのか?

最新更新日 2023年12月24日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

 
「新築賃貸」は建物が最も価値があり、社会情勢は別にして最も決まりやすい状態です。

しかし、「新築だから安心」と思っていたのになかなか決まらない、新築時はすぐに満室になったのに退去が多い、新築時は良かったのに10年後から決まらなくなってきたという声は多く耳にします。

そのようなことがないように、新築アパート・新築マンションでも空室対策が必要で、新築だからこそできる空室対策もあります。

新築ならではの空室対策とは?

賃貸住宅は「建てればゴール」ではなく、「建てたらスタート」です。
竣工してからが賃貸経営の始まりで、何十年と継続して営む事業のため、最初が良ければ何でも良い訳ではありません。

まずは、建築する前に考えるべき空室対策はどのようなものがあるか考えてみましょう。

建築費を抑えて適正な賃料設定

賃貸経営は事業のため、利益を出さなければいけません。
主だった収入は「賃料」ですが、様々な支出を考慮しても手残りが必要があることを考えたときに、収支に最も大きく影響するのは「建築費」です。

建築費があまりに高額だと、どのような空室対策や収支改善を行っても、利益を出せない場合があります。
あるいは、高額な建築費でも収支を合わせるために高い賃料を設定してしまい、空室期間が長引いたり、早期退去が増えたりと不健全な状態になることは珍しくありません。

また、建築費が安ければその分だけ収支が安定し、利益が多く出せるようになります。
そのためには、一定規模以上のマンションであれば「コンストラクション・マネジメント方式」で建築費を圧縮したり、木造建築であれば大手ではなく信頼できる一級建築士に依頼した方が安くできたり、様々な手法があります。

適正な賃料設定ができれば早期成約に繋がりますし、建築費を抑えて資金を作れればコストのかかる空室対策でも積極的に取り組めるようになります。

安定需要のある間取り

不動産の特徴は、大きいものより小さいものの方が単価は高くなり、その分だけ表面上の数字は良い内容になります。

例えば、20㎡の1Kが賃料80,000円だった場合、同じ建物で40㎡の2DKにしたからといって賃料160,000円とはならず、140,000円~150,000円になることが多いです。
つまり、2DK(40㎡)1戸より 1K(20㎡)2戸の方が収入は多くなり、1K(20㎡)3戸よりワンルーム(15㎡)4戸の方がさらに収入は多くなる傾向があるため、建築会社や不動産会社はそちらを勧めることが多いです。

そして、現在は1Kやワンルームが飽和状態となり、人口減少も相まって空室増加の一途を辿っています。

私が推奨しているのは、40~50㎡の2DKまたは2LDKです。
2DKであれば1部屋をDKと繋げて1LDKで利用したり、1部屋を物置部屋やテレワークスペースとしても利用できたりするため、汎用性があります。
加えて、ファミリーやカップル、DINKSといった年間通して需要のあるニーズがメインターゲットとなるため、単身用に比べて居住年数が長くなり、空室期間の短縮に繋がります。

また、キッチンやユニットバスといった大物設備やそれらに付随する設備工事が減ることで建築費も下がり、設備の減少によって入居後の設備トラブルの頻度も軽減されます。

加えて、今後も新築は単身用の方が多いと見込まれるため、カップルやファミリー向けの方が将来的にも安定した需要を獲得できることを考えると、確かに表面上の数字では15㎡のワンルームが良くても、10年や20年単位で考えると40㎡2DKの方が手残りは多くなるケースが多いです。

建築中の空室対策は「コンセプト設計」

建築を開始したため建築費や間取りが変更できない場合は「コンセプト設計」に取り組みましょう。
建築前の方が好ましいですが、まだ入居者が決まっていない状態であればコンセプトを考えることができます。

例えば、
・ペット共生型(またはペット可物件)
・DIY可能物件
・コミュニティ賃貸

など、発想次第で色々な選択肢があります。

賃貸住宅の増加と人口減少により、今まで以上に「この物件に住みたい」「こんな生活をしたい」という借主のニーズに応えていく物件作りが必要となります。
差別化を図ることで、一般的な賃貸住宅の相場より高く賃料設定できる場合もあり、空室対策に加えて収入の増加にも繋がる可能性があります。

新築賃貸の内見を開始する時期

では、新築アパート・新築マンションを賃貸募集することを考えたとき、いつから内見を開始すればいいのでしょうか?

選択肢としては以下の3パターンがあります。
①建築中
②竣工直前(完成前)
③竣工後(完成後)

私は「③竣工後(完成後)」を推奨しており、どんなに早くても「②竣工直前(完成前)」、「①建築中」は避けるようにしましょう。

新築工事の竣工は完工予定日より延びてしまうケースが多く、建築中に契約してしまうと引渡し日が間に合わないことがあります。
また、建築中の内見だと仕上がりが借主のイメージと異なることもあり、トラブル発生の原因になってしまうことも考えられます。

中には「内見しないで契約」というケースもありますが、その場合はそもそも借主と一切会わずに審査を行って契約するケースがあるため、入居後に不良入居者だったことが発覚し、トラブルに発展するというケースもあります。

最後に

建て替えや土地活用で新築を建てるとき、上記のようなことを考えるか否かで、将来がまるで異なったものになります。
良好な資産を築き、下の世代へ残していくためには、将来を見据えた計画を立てて行動していく必要があります。

ご愛読いただきありがとうございました。

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